理系学生の企業選びのコツをプロが紹介!就活事情と進路についても合わせて解説
2022年4月18日
こんにちは、理系の学生さんは学業と就活の両立って大変ですよね。
4年生になっても卒業研究などが就活になかなか集中して取り組みづらいと思います。
とはいえ、4年生にもなると理系学生にも採用活動は本格化しています。
何か不安なことはありませんか?
キャリアプランナー 平崎
就活生 Aさん
研究が忙しくて就活がうまくいきません。
文系の学生に比べると面接の慣れや採用担当者とのコミュニケーションに自信がありません。
自分に合った企業選びも悩んでいます。
わかりました。
そんな悩みを解決するために理系学生の就活事情や企業選びのコツについてまとめました。
就活にあまり多くの時間を割けない理系学生だからこそ、あなたに合った企業選びをして、就活を効率化しましょう!
キャリアプランナー 平崎
理系学生の就活事情と状況
冒頭に述べたように、23卒に対する企業の採用活動はとっくに始まっているにもかかわらず、理系の学生は文系学生に比べて就活のスタートが遅い傾向があります。だからといってやみくもに受けても就活は上手くいかないので、出遅れ気味の理系の学生は、自分と相思相愛の相性の良い企業選びをすることで効率よく就活することが大切です。ただし相思相愛の企業選びをしようにも、そもそもどんな選択肢があり、どんな状況に置かれているのか理解していないと狙いが定まりませんよね。
実験においても環境要因によって結果が大きく左右されるように、就活では自分と企業という2つの因子以外にも、就活市場や周囲の動向は無視できないファクターです。出遅れ気味の理系の学生が効率的に就活するには、自分のいま置かれている状況を正確に把握し、それに応じた適切な就活方針を立てる必要があります。コラムの初めにまずは、理系の就活事情についてまとめておきますので、しっかり状況を把握しておいてください。
理系学生の需要が増加傾向にある
就活市場では近年、理系学生の需要が増加傾向にあります。その理由は、テクノロジーの進歩によって何事もDX化(IT化)やAT化が進んでいるため、仕事の上でもそれを使いこなしたり発展させたりする人材が必要だからです。特にIT関連は日進月歩の成長業界ですから、どの企業もプログラマーやITエンジニアなどの技術者が不足しており、情報処理の知識を持った理系学生の需要が高まっています。またIT関連の業界以外でも、これまで人力で行っていた仕事をDX化・AT化することで、新たに情報処理や電気・機械に関する知識を持った理系の人材が必要になった企業も多いです。
それらに伴うエネルギー需要の高まりや環境問題への意識、社会の高齢化などによって、化学系・生物系・医療系の知識を持った理系の人材を求める企業も増えています。加えて技術職だけでなく、それら専門的な商品・サービスを扱う営業などの文系職でも、できればもともと基礎知識を持っている理系学生の方が望ましいという企業が少なくありません。
そのため近年、就活市場においては文系よりも理系の方が需要が高いです。実際リクルート就活未来研究所の調査によれば、既に授業も卒論もほぼ終了しじっくり就活しているはずの文系学生より、理系学生の方が早く内定を獲得しやすい傾向にあります。
理系学生の動き出しが鈍い4月の時点では、両者の内定率の差はまだ8%ほどですが、内定出しが本格化する6月には15%近い大差です。その後ほとんどの理系学生が就活を終え、就活市場からいなくなる8月以降から文系の内定率も伸びていって、卒業間際の12月にはほぼ同率に追いつきます。
これを見る限り、企業は文系よりもまずは理系優先で採用し、理系で採用すべき人材がいなくなると文系も採用し始めると言えるでしょう。ですから理系の場合、企業が文系学生の採用も視野に入れ始める前に就活すれば、よほど見当違いな方向性でない限りどこかしらの内定は得られる状況だと考えられます。
就活に充てられる時間は少ない
理系学生の就活における問題点は、文系と違って内定の得にくさではなく、そもそも忙し過ぎて就活に充てられる時間が少ないことです。冒頭にも述べたように、理系の学生は文系に比べ、就活の動き出しが遅い傾向にあります。理系の学部は文系に比べ卒業に必要な単位数が多く、1~3年次までは毎日授業がみっちり詰まっているうえ、実験などに伴う下準備やレポート提出など時間外の作業も多いです。大学によっても多少時期が異なりますが、それらが減ってくる3年の後期あたりから今度は研究室に配属され、より高度な専門の勉強をして、朝から晩まで研究漬けになる日々が始まります。
しかも理系の場合、文系と違って卒論のテーマは基本的に所属する研究室にいる教授の研究の一部であり、少しずつ角度を変えながら何年にも渡って引き継がれていくものです。その研究の前任者が卒業する前に自分一人で研究を進められるよう知識や技術を教わる必要があるので、理系の学生は3年の終わりごろまで就活について考える余裕もありません。そのため理系の場合、文系の学生が早々と就活を始める3年後期の時点ではどうしても就活のことが後回しになりがちで、就活のスタートが遅くなりやすいのです。
そのうえ4年になって卒業研究が本格化すると、研究テーマによっては実験量が膨大だったり学会発表があったりなど研究の方があまりに忙しすぎて、就活を始めてもまともに就活のための時間を取れない場合もあります。
ですから理系の学生は非常に限られた時間で就活しなければならず、自分の将来とじっくり向かい合う余裕がないです。理系の内定率は決して低くないのですが、自己分析や業界・企業研究、ES・面接対策といった就活への取り組みがおろそかになり、結果として思うような内定を得られないケースが多々あります。
大手企業を志望する学生が多い
理系学生の就活におけるもう1つの特徴は、大手企業の中でも世界に名だたる最大手の老舗企業を志望する、安定志向の学生が非常に多いことです。キャリタス就活の調査によれば、パンデミック前後の20卒と22卒における理系学生の人気企業ランキングトップ10は以下の通りでした。
トヨタ自動車とソニーの上位2社は19年卒から変わらず、理系学生から不動の人気があります。20年卒を見ると、その他の人気上位もほとんどが世界に名だたる最大手の老舗メーカーです。世界展開する老舗の大手メーカーならそのぶん研究資金も豊富で、長年の技術が培われていますから、専門性の高い理系学生にとって、それを存分に活かせるであろう最先端の場を求めるのは当然の傾向と言えるでしょう。ただし注目すべきは、理系学生の需要が最も高く、最も最先端の活躍の場であるはずのIT系企業のランク入りが少ないことです。
順位が最も高いNTTデータでも19年卒では48位、楽天グループに至っては19年卒でも20年卒でも50位以内にすら入っていません。しかしそれらの2社はIT系企業の中では唯一ランクが高い方で、その他のIT系企業のほとんどがランク外です。その代わりにパンデミック後の22卒では、それ以前は清水建設以外50位以内にも入っていなかった大手ゼネコンが、突如4社もトップ10入りしています。そして産経新聞×ワークスジャパンによる調査によれば、23卒ではそれらゼネコン企業のほとんどが再び人気上位から姿を消し、代わりにコンサルや電力・鉄道などのインフラ企業に取って代わられているのです。
- ソニー
- NTTデータ
- アクセンチュア
- トヨタ自動車
- 野村総合研究所
- パナソニック
- 鹿島建設
- 日立製作所
- JR東海
- 富士通
- 富士フィルム
- 三菱重工
- ホンダ
- 東京電力
- 清水建設
- 川崎重工
- 旭化成
- 竹中工務店
- 関西電力
- 伊藤忠商事
その理由はおそらく、ここ数年オリンピック需要で一時的に業績が右肩上がりに見えた建設業界の景気が、オリンピックが過ぎて一段落したことにあると思われます。これらのランキングから見える理系学生の就活の傾向は、業界・企業研究に十分な時間を割くことができないために、既に自分の見知っている社名や会社の規模・業績といった表面的なデータだけで企業選びをしていることです。そのため一部の企業・業界に良さそうなデータが出てくると、毎年それに理系学生の多くが振り回され、居所的に人気が集中します。
その結果、他にもたくさんの企業が理系学生を求めているにもかかわらず、非常に限られた企業・業界だけに応募者が殺到し、極端に選考倍率が高くなって厳しい内定争奪戦となってしまうのです。そのような表面的なデータだけに頼った超人気企業ばかりの企業選びをしている理系学生は、本来なら内定を得やすいはずの理系需要を活かせず、初期選考の足切りによって持ち駒が全滅する恐れもあります。
面接回数が文系よりも少ない
理系学生の就活では、面接回数が文系より少ない企業が多いのも特徴です。企業側も研究や学業で忙しい理系学生の事情は承知していますから、面接回数を減らしたり文系では当たり前のグループワークなどをなくしたりなど、理系学生が少しでも自社の選考を受けやすくなるよう配慮している企業が結構あります。企業側が理系学生に求めているのは社会性の高さよりも専門知識なので、社会人としての気質を見るグループワークや度重なる面接は、企業側としてもそれほど重要でないわけです。その代わりに、学歴や大学名、学部学科、所属する研究室、個人の研究内容と実績、大学の成績、Webテストによる基礎学力の高さといったものが文系よりも重視されます。
理系の場合は大学での専門性を活かし、就職後もその分野の研究を続けたいと考える人も多いですが、就活の時点で大した研究成果を残せていない学部生が研究開発部門に採用される例は稀です。志望する企業が大手であればあるほど研究開発部門は狭き門であり、最低でも修士以上を条件としている企業が多いでしょう。また、そうした専門性重視の選考傾向には、研究開発以外の一般的な理系技術職を目指すうえでも難しい問題があります。その1つは、理系学生に人気の大手企業であればあるほど一般的な技術職でも合格条件が厳しく、学歴フィルターに引っかかる可能性が高いことです。
しかし対策によってWebテストの点数は上げられても、大学名や学部学科、これまでの成績などは今さら変えることができません。そのため大学ランクの低い人や大学での成績が振るわなかった人は、書類選考突破の可能性が低い企業を諦めざるを得ず、企業選びの選択肢が限られるケースも出てくるはずです。それに加えて理系の選考では面接回数が少ないので、1回1回の面接における質疑応答のクオリティが非常に重要になります。
ところが理系学生は日ごろ研究室にこもりきりで、狭い人間関係しか持っていないため、コミュニケーション能力に欠ける人も少なくないです。いくら理系は社会性より専門知識重視とはいえ、企業の仕事は大勢の人間が関わるものですから、社会人として最低限のコミュニケーション能力もないと判断されれば敬遠されます。理系学生は研究などの忙しさからエントリー数が少なく面接対策もおろそかになりがちですが、そもそも面接回数が少ないので実践経験を積めず、失敗を挽回する機会もないのです。専門性ばかりに頼って面接を軽視すると、大手企業でなくても落ちる可能性が高いことは理解しておいてください。
理系学生の主な進路と選択肢
先ほど学歴や専攻、成績などによって企業選びの選択肢が限定されるケースがあると述べましたが、実際のところ理系の学生にはどのような選択肢があるのでしょうか。就活の効率化を図ろうにも、もともとどんな選択肢があるのかを知らないと、選びようがないですよね。そこでここからは、理系学生の主な進路と就活の選択肢について解説します。
理系の場合は学業や研究の忙しさから、4年になるまで自分の将来について深く考える余裕がなかった人も多いです。就活シーズンだからと慌てて目の前の選択肢に飛びつき、のちのち悔いが残らないよう、今一度自分の取り得る選択肢について確認しておいてください。
大学院と就職
理系学生の進路選択は、大学院に進学するか、それとも就職するかというところから始まります。「そんなの当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、実はそうでもありません。理系学生は文系学生に比べ、圧倒的に大学院への進学率が高く、大学卒業後すぐに就職せずに修士課程に進む学生が多いです。文科省の調査によれば、文系の大学進学率が平均5%ほどであるのに対し、理系では平均40%もの学生が大学院に進学します。
もちろん学部学科によってもかなりバラツキがありますが、比較的進学率が低い農学部でも7%、理学部では12%、工学部に至っては大学院進学率が50%を超えるほどです。文系なら大学院に進学する人は稀で、一般的には進学が選択肢の1つに含まれませんが、理系では違います。就職先について考える以前にまず、大学卒業後すぐに就職するのか、いったん修士課程か博士課程まで進んでから就職するのか、あるいはそのまま学者の道を目指すのかといった選択をしなければならないのです。
実際、前述のように民間企業の研究開発部門は非常に狭き門ですから、そうした就職を望むなら大学院への進学は必須と言っても過言ではないでしょう。なぜなら研究開発部門は、会社の利益につながる目覚ましい成果が上げられなければ、莫大なコストを垂れ流すだけだからです。
ですから大抵の企業では、自社の研究開発部門において大卒から研究者を育てるようなことはせず、修士課程や博士課程でその分野の研究実績を積んでいる人を採用します。つまり「大学院に進まない」と決めた時点で、研究開発部門へ就職できる可能性がほとんどなくなるため、理系学生にとってはその選択が就活を分かつ大きな分岐点となるわけです。
自由応募と推薦応募
理系学生の就活では文系と違って、大学卒業後すぐに就職するにしても、自由応募で就活するか推薦応募で就活するかという2つの選択肢があります。文系では推薦応募で就活する学生は稀ですが、理系の場合、お世話になっている研究室の先生や大学の推薦によって企業選考に応募する学生も多いです。一般的には、自由応募と推薦応募の選考過程は全く異なります。推薦応募の場合、自由応募の学生とは別枠で、簡単な面接を受けるだけといった選考方法を取る企業も多いです。
また自由応募の学生と同じ枠でも、推薦応募だと書類選考や初期の面接が免除されたり、評価点がプラスされていて内定率が高かったりなどのメリットがあります。つまり推薦応募で就活すると、内定が得られる可能性がかなり高く、就活そのものも楽に済ませられるわけです。ただし推薦応募で選べる企業は、その学部学科や教授がどれだけ多くの民間企業に人脈を持っているかにかかっているので、必然的に選択肢は狭くなります。
そのうえ内定率に関しても、推薦応募なら自由応募より有利であることは確かですが、推薦があるからと言って必ずしも内定がもらえるとは限らないです。推薦の効果がどのくらい評価のプラスになるかは、人脈の太さと企業の考え方によります。学部学科や教授の推薦があっても落ちるケースは多々あるので、過信は禁物です。しかも推薦応募の場合、その人脈を潰す事態になりかねないので、基本的に学生側からの辞退や入社直後の退職は許されません。
推薦応募は比較的内定が取りやすく就活も楽ですが、それが人脈に基づいているからこそしがらみに縛られ、学生自身の選択の自由はほぼないと考えてください。それに対して自由応募は、学生自身が自由に企業選びをし、学生自身の実力によって選考を勝ち抜いていく就活スタイルです。選考過程をスキップしたり加点評価がもらえたりといったメリットはないですが、その分エントリー先選びにしても最終的な入社先選びにしても、自分の自由に決められます。しがらみに縛られたくない理系学生には、こちらの方が向いていると言えるでしょう。
理系就職と文系就職
理系学生の企業選びには大きく分けて、いわゆる「理系就職」と「文系就職」の2つの選択肢があります。「理系就職」とは、大学で習った(研究した)分野をそのまま仕事として選ぶ方法です。もちろんそのままと言っても、企業の仕事は学術的な研究とは違うので、研究室単位での研究内容と完全に一致するものはおそらくないでしょう。理系就職とはそういった狭い意味ではなく、学科や学部で習った知識を活かせる仕事、つまり化学科なら化学の知識を活かせる化学関連の仕事、情報処理科ならITの知識を活かせるIT関連の仕事に就くことを指します。
それに対して「文系就職」とは、その職業自体が理系職か文系職かを問わず、大学の専攻とは異なる分野で就職することです。いま大学の研究室で非常に狭く深い専門知識を追及している理系学生には想像しにくいかもしれませんが、文系では大学で習った学問とは関連の薄い仕事に就くのが一般的となっています。関連する学問を学んでいないと仕事を理解することすら難しい理系職と違って、文系職には必ずしも大学でそれを体系的に学んでいなくても問題ない仕事の方が多いです。
たとえば営業職などは、経済の知識があればそれに越したことはないでしょうが、たとえ大学で経済学を学んでいなくても仕事にならないほどの支障はありません。そうしたことから文系職では、多くの企業が学生の専攻にあまり重きを置いておらず、学生側も専攻にさほどとらわれない企業選び・仕事選びをします。そのため文系学生と同様に、理系学生が自分の専攻にとらわれず、それとは直接関連のない業界や職種で就職することを「文系就職」と呼んでいるわけです。
ただし機械科の学生が旅行会社の営業といった文系職に就く場合だけでなく、生物科の学生がIT企業のエンジニアなど生物学と無関係な理系職に就くのも文系就職の一種と考えてよいでしょう。理系職の選考は専門性重視とはいえ、自社の仕事と完全にマッチする専攻の学生を確保するのは難しいので、やや異なる専攻の学生でもいいから理系学生を採用したがる企業も中にはあります。
文系学生が理系職に就くのは無理がありますが、理系学生は自分の専攻とはかけ離れた理系職でも、努力すれば理解できる程度の最低限の基礎知識は持っているためです。そういう意味で理系の学生は、自分の専門分野、それ以外の理系職、文系職と、幅広い企業選び・仕事選びが可能だと言えます。
理系就職で人気の業種は「IT・エンジニア・研究者など」
理系学生の就職先として人気が高いのは、プログラマー、システムエンジニア、Web・アプリ・ゲームのクリエイターなどIT関連職です。他にも、機械・電機・設備などのエンジニア、設計者、研究者、開発者、生産技術、品質管理といった大学で学んだ学問を活かせる職種が人気があります。理系の学部学科は文系と違い、機械工学、建築、薬学、化学工学、情報処理など、企業の仕事と直結する学問が多いです。そうした分野は商業活動や生活と密接に関わるだけでなく、関連する仕事に携わるには職種によって程度の差こそあれ、少なからず専門知識が必要になります。
そうした理系職は、医師になるには医学部で学ぶ必要があるのと同様、完全に関連性のない文系出身者の参入が難しく、まさしく大学で専門知識を学んだ意義を発揮できる職業です。大学で学んだことを活かしたい、より意義深いものにしたいという思いが、そうした傾向に表れています。ただし前述のように理系職の選考では専門性の高さが重視されており、特に大企業の研究開発部門など最先端を行く職種では、より高度な専門知識や経験を求める企業が多いです。
残念ながら志望する企業や職種によっては、「修士課程以上」「難関大卒以上」「偏差値○○以上」といった学歴フィルターで足切りされることも予想されます。現在の狭い専門分野にこだわり、あまり専門性の高い職種ばかり志望していると、就活そのものが難航する可能性が高いです。同じ業界・同じ企業でも、最先端の研究開発をする部門以外の、周辺の職種であれば理系学生の需要はかなりあります。
たとえばその会社の商品・サービス自体の専門性が高いなら、顧客や仕入れ先と接触する人も、社内の調整を行うサポート役の人も、できれば理系学生の方が意思疎通が図りやすく、望ましいはずです。理系学生は企業選び・仕事選びにおいて自分の専攻や研究に固執しがちですが、理系学生が求められている仕事は、何も最先端の専門職だけではありません。理系学生は文系学生と違って理系職・文系職を合わせた幅広い企業選び・仕事選びが可能ですから、現在の研究を継続するような狭い専門職だけでなく、幅広い仕事に目を向けるべきです。
理系学生の企業選びのコツと探し方
理系学生は幅広い企業選び・仕事選びが可能にもかかわらず、狭い専門分野の中でもさらに狭き門である高度な専門職ばかりに目を向け、自ら就活を難しくしてしまう傾向があります。しかし卒業研究で追求している狭い専門知識だけが、理系の取り柄ではないです。理系学生が求められている仕事は他にもたくさんありますから、もっと視野を広げれば本来なら文系学生よりもずっと選択肢が多く、ずっと有利に就活を進められます。
とはいえ理系学生はこれまで就活について考える余裕がなかったので、世の中にどんな企業があり、どんな仕事に目を向ければいいのか見当がつかない人もいるかもしれません。そこでここからは、理系学生の企業選びのコツと探し方について解説していきます。理系学生が本来持っているはずのアドバンテージを、就活での企業選びへ活かせるようにしましょう。
インターンシップに参加する
理系学生が上手な企業選びをするには、積極的にインターンシップへ参加するとよいです。理系学生は忙しくて業界・企業研究もままならず、そこで本当はどんな仕事が行われているのか、他にどんな選択肢があるか知らないまま、表面的な情報だけで何となく企業選びをしようとする人が少なくありません。しかしいくら忙しくて時間が取れないと言っても、その状態で無理やり就活を進めようとするのは反って非効率的です。仕事や職場のイメージがつかめていないので就活へのモチベーションが上がらないうえ、どの企業も同じように見えて、企業選びにも迷いが生じます。
採用選考に進んでも、企業理解が浅いため適切なアピールができず内定がもらえなかったり、入社後ミスマッチを感じ早期退職に繋がったりする可能性が高いです。大学進学や研究室選びの際に選んだ専門分野が、必ずしも自分に適しているとは限りませんし、理系学生が求められている企業や仕事は専門職・専門業界の他にもたくさんあります。企業選びに失敗しないためには、企業説明会や就活情報サイトなどだけでは分からない詳細な情報や感覚的な情報を集め、もっと業界・企業理解を深める必要があるのです。
インターンシップに参加すれば、企業説明会や就活情報サイトなどよりもっと詳しい内容が語られるので、具体的にどんな部署や職種があり、実際どんな仕事をして、どんな人物が求められているのかなども分かります。またインターンシップでは説明だけでなく実際に職場を見学したり、仕事の体験をしたりできる場合もありますから、その雰囲気や仕事が自分に合うか感じることもできるはずです。そうすれば自分に合った企業や仕事を見極め、志望の方向性が固まりやすいとともに、そこで得られた情報が採用選考でのアピール材料としても役立てられるでしょう。
また企業によってはインターンシップから一般選考より簡略化された特別選考に進めたり、一般選考でもインターンシップでの評価が加算され、有利に働いたりするケースがあります。理系の学生は就活に充てられる時間が限られているからこそ、インターンシップに参加して企業選びや選考に役立つ情報を集め、就活を効率化することが大切です。
大手だけにこだわるのではなく、視野を広げる
理系学生は業界や職種だけでなく、企業規模においても視野を広げ、幅広い企業選びをすることをオススメします。前述のように理系学生は大手志向の傾向がありますが、大手ばかりにこだわっていると視野が狭くなり、目の前にあるもっと自分に合った企業を見逃す可能性が高いです。しかも大手企業はそもそも競争率が高く、足切りが多いですから、大手企業ばかり受けているとなかなか内定が得られないまま就活が長引き、反って時間を取られてしまいます。
理系学生は内定率が高いぶん人気の理系企業・理系種は枠が埋まるのも早いので、気付いたときには時すでに遅く、ちっとも入りたくない企業・やりたくない仕事しか残っていない状況になりかねません。自分に合った就職先を確保するためにも、さっさと就活を終わらせて卒業研究に集中するためにも、早い段階から広い視野で企業選びをすることが大切です。確かに理系学生は大手志向の傾向が強いですが、それは単純に安定した企業を求めているというだけでなく、時間がないことが最大の原因だと思われます。理系の学生は就職において、大学で学んだことを無駄にせず、自分の専門性を活かせることに重きを置いている人が多いです。
ところが忙しくて企業探しに十分な時間を割けないため、業界・企業研究をほとんどしておらず、何となく社名に聞き覚えのある会社から志望企業を選んでしまいます。聞き覚えのある企業なら基盤が大きくて倒産しそうもないし、職場環境も整っていて、最先端のやりがいある仕事ができるだろうという、かなり大雑把な当て推量によってです。しかし前述のように現実的には、大手企業の研究開発部門など理系学生に人気の職種では、修士・博士課程や一流大学の著名な教授から学んだ学生といった、より専門性の高い人材が求められています。それに該当しない学生が大手で内定を得られても、人気の仕事に携われるケースは極めて稀です。
大手企業では会社が大きいぶん色んな種類の仕事がありますから、本人の希望や専門性とはかけ離れた部署に回される可能性が高いでしょう。修士・博士課程でも一流大学でもないけど自分の専門性を活かした仕事をしたいと考えるならなおのこと、大手だけでなくベンチャー企業や中小企業にも目を向けるべきです。実際、知名度が低くても堅実な経営と成長を続けている優良企業はたくさんありますし、時代の先端を行く事業ややりがいある仕事を行っている企業はたくさんあります。それに早く気づいて早い段階から視野を広げておくことが、理系学生の企業選びを成功させるコツです。
理系学生が就活を成功させる秘訣
最初に説明したように、理系学生の需要は高く、内定率は決して低くありません。しかしどこかしらの内定は得られるにせよ、それが自分の希望や専門性、価値観などと合致するかどうかは、また別問題です。理系学生は就活に充てられる時間が少ないので、業界・企業研究が不十分な状態で就活し、一部の有名企業に人気が集中する傾向があります。内定の可能性が低い人気企業ばかり受けて貴重な時間を無駄にし、結果的に入社してから後悔するような残り物の企業にしか入れないのでは、本末転倒です。
卒業研究も大事ですが入社後の人生はもっとずっと長いわけですから、忙しい中でも就活ときちんと向き合い、自分に合った企業を見極めたうえで適切な企業選びをしましょう。とはいえ、いくら自分に合った企業選びをし、理系学生の需要が高いと言っても、簡単に満足のいく内定がもらえるほど甘くはないので、もちろん就活対策は必要です。ここからは、理系学生が就活を成功させる秘訣について紹介しますので、就活の参考にしてください。
理系就活のスケジュールを把握する
理系学生が就活を成功させるためには、適切な企業選びだけでなく、理系就活のスケジュールをきちんと把握しておくことが大事です。3年次には卒論を書き上げ、有り余るほど就活に時間を割ける文系学生と違い、卒業間際まで研究で忙しい理系学生は就活に充てられる時間が限られています。ところが理系学生は卒業研究にばかり気を取られているので、どうしても就活のことが後回しになり、企業選びも就活対策も後手に回りがちです。企業選びが間に合わずエントリーの時期を逃してしまったり、内定率は高いのに、ES対策や面接対策が間に合わないために選考を勝ち抜けなかったりといった人が結構います。
結果として、ようやく内定がもらえるくらい就活力が付いた頃には、希望に合わない企業しか残っていない状態になるわけです。そんな風にならないためには事前にきちんと就活スケジュールを把握し、研究生活とのバランスを考えながら、限られた時間を有効に使えるよう計画的に行動する必要があります。基本的な就活スケジュールは、経団連の就活ルール廃止後も変わらず「3年3月:採用情報解禁→6月:面接開始→10月:内定式」です。
しかし近年は経団連による締め付けがないので、全体的な早期化と自由化が進んでいます。具体的に言うと、採用情報解禁の時期を待たず、3年次の短期インターンシップを通して採用選考を行っている企業も少なくないです。インターンシップは業界・企業理解を深め、適切な企業選びをするためにも重要なので、必ず参加しましょう。理系学生は文系と違って3年の後半になるほど忙しいですから、夏休みに合わせて行われるサマーインターンの時期くらいしか、まとまった時間が取れないと思います。サマーインターンの選考が3年の6月ごろ始まるので、それまでに参加すべき企業選びができるよう、自己分析と業界・企業研究を一通り済ませておかなければなりません。
また本選考の採用情報解禁日も近年は3年3月よりもっと早まっており、2月頃には採用情報が公開され、同時に説明会とエントリーの受付を開始する企業が多いです。自分に合った企業選びをするにはその企業・業界の詳しい情報が不可欠ですから、2月になったらできるだけ多くの説明会に参加し、情報収集してください。同時に、WebテストやESなど書類選考への対策も、この時期までに進めておく必要があります。
面接は基本6月からとなっていますが、実際には書類選考後すぐに面接する企業も珍しくないので、面接対策も企業選びを終えたら早めに始めておくべきです。ただし自由応募で就活するか推薦を利用するかで、就活スケジュールは大幅に変わってきますし、文系企業では文系学生に合わせてすでに本格的な選考が始まっています。そのためどんな就活スタイルを選ぶにせよ、とにかく早いうちから就活と向き合い、どう就活していきたいのか計画を立てることが大切です。
肩書に頼るのではなく、自分の強みをアピールする
理系学生が就活を成功させるためには、肩書頼みではなく、自分の強みをしっかりアピールできるよう対策する必要があります。確かに、理系学生は需要が高いので文系就職を狙う場合には理系学生の方が有利ですし、理系就職の選考では学力・専攻・資格などから専門性の高さが重視されるのは事実です。しかしだからと言って、それらの肩書だけで合否が決まるほど就活は単純ではありません。採用選考ではどの企業も、自社の仕事を理解するのに必要な専門知識があることに加えて、実際に自社の業務をこなすのに必要な資質(人柄)を持ち、会社の成長に貢献できる人材を求めています。
つまり大学名や学部学科、資格といった肩書によって専門性を誇示するだけではダメで、自分にはその会社の仕事に役立つどんな強みがあり、どのように会社に貢献できるのか説明しなければならないのです。理系学生は卒業研究が忙しいため企業選びや就活対策がおろそかになりがちですが、「理系だから」「有名大学だから」「資格があるから」と肩書ばかりに頼っていると、内定にはたどり着けないでしょう。理系就職であれ文系就職であれ、専門知識以外にも人柄における自分の強みを活かせる企業を選び、自分と企業の相性の良さを上手にアピールすることが大切です。
そのためにも、自己分析を行って自分の強みを明確にするとともに、きちんと業界・企業研究を行って自分の強みが活かせる企業選びをしてください。自分の専攻外である文系就職を目指す場合は特に、大学で学んだ学問そのものは仕事と直結しませんから、それ以外の人柄における強みで相性をアピールすることが重要になります。文系就職では理系が有利と言っても、早くから就活している文系学生は就活に慣れていてアピールが上手ですから、文系学生と同じ強みをアピールしても勝ち目はありません。
専門知識を活かせるわけでもなく、文系学生に比べ社会性が低めでもある理系学生を文系企業がわざわざ採用したがる理由は、理系学生には「数字に強い」「根気強い」「集中力が高い」「論理的思考力に長けている」といった理系学生特有の強みがあるからです。文系就職を目指す理系学生は特に、自分の人柄の中のどの部分が文系企業に求められているのか、正確に把握しましょう。また、文系企業の面接官は普段アピール慣れした文系学生ばかり相手にしているので、「理系だから」と高をくくってあまりに就活対策を怠ると、就活力の低さが悪目立ちします。忙しい中でもきちんと就活対策を行い、適切なアピールができるようにしてください。
大学院や推薦の羨むのではなく、“今”を頑張る
理系学生が就活を成功させるためには、自分の状況を受け入れて、今できることを頑張るように心がけましょう。理系学生には大学院に進学する人や推薦で就活する人が多いですし、正直なところ理系就職を目指す場合にはその方が有利であることも確かです。理系就職を目指すと、希望する職種によっては企業選び段階で修士以上の学歴が指定されてエントリーすらできなかったり、著しく内定率が低くなったりする企業があります。
また、そんな風にして自分の就活が思うようにいかないのに、教授推薦で簡単に内定を得られ、さっさと就活を終わらせる人もいるわけです。そういう状況にあると気分的に落ち込み、大学院に進学した人や推薦がもらえた人たちをうらやましく思う気持ちはよく分かります。しかし、大学院に進みたかったけれどダメだった、推薦をもらいたかったけどダメだったという事実は変えようがないものです。他人の状況をうらやんでも自分がそれらの人に取って代われるわけではないですし、自分の状況を嘆けば就活が進むわけでもありません。
実現不可能なものを望んでも意味がないうえ、気が散ることで目の前の就活に力が入らず、ますます就活がうまくいかなくなってしまいます。それに理系の学部で学んだからと言って、必ずしも今研究している狭い専門分野の、そのまた狭い専門職に就くことだけが人生の正解ではないです。世の中には様々な仕事がありますから、今研究している分野が自分にとって最良の選択とは限らず、理系就職にせよ文系就職にせよ視野を広げればもっと自分に合う仕事を見つけられる可能性があります。
また、推薦で就活すれば今は楽できるでしょうが、その企業が必ずしも自分に合った社風とは限らないうえ、たとえ合わなくても辞退や早期退職はできないです。就活は今だけでなく今後の人生に関わることですから、長い目で見れば初めから可能性を1つに絞ってしまう推薦応募より、広い選択肢のある自由応募の方が自分に合った企業を見つけられるかもしれません。正しい選択は人それぞれなので、結果的に自分にとって満足のいく内定が得られれば、自由応募でも文系就職でもいいのです。今の自分に実現可能な選択は何かを考えて現実的な企業選びをするとともに、周りを気にせず目の前の就活に集中し、自分が今すべきことに全力を傾けてください。
プロからのサポートを受けると安心!
忙しい理系学生が就活を成功させるためには、理系に特化した就活イベントに参加したり、就活エージェントなどのプロからサポートを受けたりするのが効果的です。就活シーズンと重なる3~4年になると、卒業研究でますます忙しくなる理系学生は就活にかけられる時間が限られており、企業選びや就活対策が十分にできません。理系に特化した就活イベントを利用すれば、そこには理系学生を採用したい企業ばかりが集まっていますから、効率的に内定の可能性が高い企業を探せるはずです。
ただしいくら理系学生の需要が高いとはいえ、自分と相性の良くない企業を受けたり、ろくに就活対策せずに受けたりしていれば、当然ながら内定率は低くなります。また、相性の良くない企業から内定をもらっても、結局は就活をやり直す羽目になったり、入社後に後悔する羽目になったりするだけでしょう。限られた時間の中で自分にとって最良の内定を掴むには、適切な企業選びと就活対策が不可欠です。研究に忙しく、それらを自力で行う時間がない理系学生には、就活エージェントなどのプロの助けを借りることをオススメします。
就活エージェントに頼れば、適切な企業選びはほぼ終わったようなものです。時間のかかる自己分析も就活エージェントが手伝ってくれるので早くて正確ですし、自力で情報収集しなくても業界や企業の情報が集まっていて、就活生の希望や専門性、資質に合った企業をあっという間に探してくれます。それだけでなく、面接日程の調整などに必要な企業とのやり取りを代行してくれるので、ビジネスマナーに不慣れな理系学生には一石二鳥です。
しかも、志望企業の選考傾向を把握したうえで効果的なES対策・面接対策を指導してくれますから、必然的に内定率も高くなります。そのため就活エージェントに頼れば、短時間で最良の結果を掴むことができるわけです。
キャリチャンでも、理系学生に特化した無料の就活イベント「理系就活サポート」を開催していますので、ぜひ活用してください。このイベントでは、プロのキャリアプランナーが理系学生一人一人をマンツーマンで担当し、それぞれに合った就活スタイルでの内定獲得をサポートします。理系就職でも文系就職でも、全く就活の方針が立っておらず、どちらにすべきか迷っている人もOKです。忙しくて企業選びも就活対策もする暇がないからこそ、プロに頼って就活を効率化し、最短で納得のいく内定獲得を目指しましょう!
おわりに
理系学生には、大学院に進んでから理系の専門職を目指すか、大卒で一般の理系職を目指すかといった選択肢のほかに、専攻とは無関係の文系就職をするという手もあります。理系学生は卒業研究で忙しいので、推薦応募で手っ取り早く就活を終わらせようとする人も多いですが、必ずしもそれが自分に合った就活スタイルとは限りません。自由応募であれば、時間や手間がかかっても幅広い選択肢の中から自分に合った企業選びができます。
どんな就職を目指すかで就活のやり方も様々ですから、早く就活の方針を固めて就活計画を立て、それぞれに適した行動を取ることが大切です。しかしそうは言っても研究で忙しい理系学生には、実際の企業選びや就活対策はもちろん、落ち着いて就活のことを考える暇もない人もいると思います。
限られた時間で就活せざるを得ない状況だからこそ、理系に特化した就活イベントや就活エージェントを利用し、就活の効率化を図るべきです。企業探しなどの面倒なことをエージェントに任せ、就活対策のサポートを受ければ、研究生活と両立しながら納得のいく内定を目指すことが可能になります。
就活相談サポートに参加しよう!
この記事の監修者
平崎 泰典
株式会社ジールコミュニケーションズ
HR事業部マネージャー
2016年に入社後、企業向けの採用コンサルティング業務を経て、就職・転職希望者に対する個別就職支援を担当。「キャリチャン」「合説どっとこむ」において年間100回以上の就職・転職セミナーの講師も務める。
主な担当講座に「営業職や種類が適性がよくわかる解説講座」「手に職をつけられる仕事解説講座」などがあり、これまで3,000名以上に対して講座を実施。
就職支援では「自己分析」と「業界研究」を得意として、就活初期の学生や求職者を相手に基礎からサポートを行う。年間1,000名以上の内定獲得を支援。